Japan Capital Goods Index 2026

Japan Capital Goods Index 2026

2026年10月19日

稼ぐ力は世界水準を超えた ── 日本の産業財プレイヤーの次なる一手

日本の産業財企業は、もはや「高品質だが稼げない」存在ではない。収益力は多くの領域で世界水準に到達した。次の競争軸は、磨き上げた技術力と収益力を、世界で再現可能な成長へと転換できるかにある。

フィジカルAIやデータセンター冷却をはじめとする新たな成長市場を捉え、製品の価値をソリューションとして世界へ展開できるか。日本の産業財企業は、復活の先にある「真のグローバル成長」を問われている。

「良品廉価」を超え、日本の産業財は変わり始めた

・売上成長と利益率向上を同時に実現し、世界平均を超える収益力を実現

・コスト競争力に加え、アフターサービス強化が収益性向上を牽引

・世界水準の稼ぐ力を獲得した一方、グローバルプレゼンスは縮小傾向

・AI時代の成長機会を取り込み、次なるグローバル成長へ転換できるかがカギ

グローバル収益水準への到達

建物やプラント、製造現場、エネルギー・輸送インフラに至るまで、産業活動のあらゆる場面を支える設備・機器・ソリューションを提供する産業財セクター。

今回のスタディでは、弊社が規定する産業財の12サブセクターにおける上場企業を対象に、日本企業とグローバル企業の競争力を比較した。

その結果、日本の産業財プレイヤーは、2019年から2025年にかけて、売上高を円ベースで年率4.7%成長させるとともに、EBITDAマージンを9.5%から12.2%へと2.7ポイント改善していたことが分かった。コロナ禍やサプライチェーンの混乱を乗り越え、単なる業績回復にとどまらず、成長と収益性向上を同時に実現していた。

さらに注目すべきは、収益性の改善が産業財セクター全体に広がっている点だ。2019年時点から、全てのサブセクターで日本企業のEBITDAマージンは改善しており、且つグローバル平均の改善幅を超えている。

「良品廉価」の先へ

日本の製造業には、優れた製品を絶え間ないコスト削減で安価に提供する一方、利益率が低い傾向が長らく続いていた。しかし、今回のスタディからは、その構図が変わり始めていることが見て取れる。

実際、2019年時点では、工作機械セクターを除けば、殆どのサブセクターはグローバル平均を下回る収益性しか得られていなかったが、2025年には多くのサブセクターでグローバル平均を上回る水準に達した。

「ものづくり大国・日本を支えてきた産業財セクターは、今や世界で稼げる産業へと変貌を遂げつつあることが弊社分析で裏付けられた。次に問われるのは、AIやデータセンターといった成長市場を取り込み、世界で伸び続けられるかにある。」
五十嵐 雅之
シニアパートナー
東京オフィス, 東アジア

日本の産業財企業は、技術力や品質だけでなく、「稼ぐ力」においても世界と競争できる位置に近づきつつあるといえよう。製品単体の性能や価格だけで競争するのではなく、顧客の業務全体を支えるソリューションへと事業の軸足を移してきたことが大きい。

例えば電動工具では、工具本体に加えて、共通バッテリーや周辺製品を組み合わせたエコシステムを構築し、継続的な顧客接点と収益機会を生み出す動きが進んでいる。磨き上げてきたモノづくりの力が、サービスやビジネスモデルと結び付くことで、収益力へと転換された結果が示されたと考える。

円安影響を踏まえたグローバルプレゼンス

もっとも、日本企業の競争力を評価する際には、為替の影響を切り分ける必要がある。円ベースでは力強い売上成長が確認される一方、ドルベースで見ると、日本の産業財セクターの売上高は横ばいに近い。足元の成長には円安の押し上げ効果も含まれており、実質的な海外成長力にはなお課題が残る。

また、グローバル産業財セクターにおけるサブセクターごとの売上高上位10社に占める日系プレイヤー数は低下傾向にある。収益性では世界水準に到達しつつある一方、グローバル市場における規模や存在感では、必ずしも同じ成果を上げられていない。今後は、海外市場で成長を再現し、グローバル企業としてのプレゼンスを高めることが当然求められる。

産業財技術をてことしたAI関連ビジネス期待

株式市場の成長期待を映すPERを見ると、残念ながら日本の産業財セクターは世界に比べて低く評価されている。成長期待が乏しいという評価だ。ただ、その中でも、エネルギー機器、工作機械、自動化設備、の3つサブセクターは相対的に高い水準にある。

これらの共通項として挙げられるのは、AI技術の発展・普及に伴う需要が見込みやすい点だ。分かりやすいのは、工場や建設現場でのフィジカルAIであり、中国・米国が先行しつつあるも、我が国産業財プレイヤーは工作機械や自動化設備などで世界的な企業が多数存在しており、その果実を得られるチャンスは十分にある。

さらに、AIデータセンター向けの冷却ソリューションはかなり幅広い事業機会をもたらす。冷却装置・空調機器だけでなく、冷却用ポンプなど、産業財企業が関与する領域は数多い。日本の産業財プレイヤーが蓄積してきた要素技術を、成長市場のソリューションへと組み替えられるかが問われている。

世界で戦える収益力はすでに備わりつつある。世界で伸びる成長力へ変えられるかが、日本の産業財プレイヤーの次の競争軸となろう。

本スタディでは、今後も経年変化を見ながら、日本産業財プレイヤー全体とサブセクター単位での競争力動向を把握・分析していく。

スタディ全文

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五十嵐 雅之
シニアパートナー
東京オフィス, 東アジア
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