ローランド・ベルガーは、アジアの消費者動向を分析し、カテゴリー、チャネル、ブランドを横断した商機について考察している。
マテリアルハンドリング業界の未来
By 五十嵐 雅之 and Philipp Schmitt
ミドルゾーンでの低価格化進展が、自動化ソリューションの飛躍的普及のトリガーに
マテハン機器は今後もコト化・省人化が主戦場
倉庫内を動き回る、フォークリフト、コンベヤ、無人搬送車(AGV)、自動走行搬送ロボ(AMR)を中心に、それらのサービス・ソフトウェアで構成されるマテハン機器市場は、コロナ禍も追い風となったEC市場拡大に伴い、順調な市場成長を遂げ、世界で6-7兆円前後の規模感を誇る。
いまだハードウェアが市場の7割を占めるも、付加価値の源泉は確実にシフトしてきており、自動化倉庫に伴うソフトウェアやサービス領域が急成長してきている。物流現場の人手不足を考えれば、この流れは不可逆的と言えよう。特に、AMRは大手プレイヤーともに幅広い用途開発を志向してきており、単なるピッキング・搬送だけでなく、在庫管理や清掃さらにはメンテナンスまで手掛けるAMRが各種展示会で出品されてきている。
中国OEMの台頭が自動倉庫の普及を加速化
従来、マテハン市場は、日本を含む先進国プレイヤーの牙城であったが、近年、中国系OEMの台頭が著しい。特にフォークリフトでは、世界の全需に占める中国輸出品の比率が年々増加しており、2023年にはその比率が20%を超えた。
特に、欧州ではミッドレンジフォークリフトでの中国OEMの存在感が増してきており、ユーザーの声を拾ってみても、決して安かろう悪かろうではなく、十分な製品品質にあり、且つサービス品質も十分との声が多くなっている。
自動倉庫関連の機器・システムは高額であり、投資回収の流れがネックとなっていたが、上記ハードの価格低下トレンドに加え、世界的な人件費高騰が追い風となっている。実際、弊社が行った特定のケースでは、2018年頃は6-9年要していた投資回収が、足許では3年程度に短縮されていることが確認できている。
欧米での盛んなM&A・合従連衡を契機とした打ち手
今後、本格な拡大期に入る公算が大きいマテハン機器市場は、過去来、主にフォークリフトを手掛ける「総合型」プレイヤーが優位性を誇ってきたが、ハードだけでは勝負できない状況ゆえ、ソフト・サービス領域への染み出しが重要なカギを握る。他方で、強力なソフトウェアベンダーもこの業界には多数存在しており、逆方向からの攻め筋も活発化してきている。
それ故、欧米企業を中心に、M&Aや提携がかなり進んでおり、ミッドレンジからの攻略を目論む中国OEMとの鬩ぎ合いは益々激しさを増しそうだ。
この領域は、日系企業も世界的な有力プレイヤーが多いのが特徴だが、残念ながら欧米ほど再編の動きは見られない。日本市場には、中国OEMが殆ど入ってきておらず、ガラパゴス市場化していることもその一因かもしれない。
ハード技術の優位性を持ちながら、それに拘泥しすぎて世界市場での存在感を失っていった悪しき歴史を繰り返さないためにも、これまでの顧客・機器ストックを最大限活かし、異業種のロボティックス領域などとの連携を深め、先端技術を結集した「日本連合」として、世界市場で勝負できるかに掛かっているのではなかろうか。
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