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半導体材料・原料市場の動向

半導体材料・原料市場の動向

Portrait of 三輪 政樹
プリンシパル
東京オフィス, 東アジア
+81 3 4564-6660
2024年4月14日

ランドスケープ概観と今後の成長に向けた視座

半導体材料・原料は、日系企業が長年ポジションを維持・継続していることに加え、ニッチ領域では中堅企業も一定の存在感を有している。こうした中、高集積化に伴う材料開発コスト上昇による効率的な生産開発実現を背景に、大手レジストメーカーの事例に見られる様に、再編に向けた機運が醸成されつつある。

半導体材料・原料領域では、市場規模が14兆円を超す巨大市場である一方、250~の材料・原料、200~の主要企業が、中堅・中小企業も含めて多様に存在する領域である。
特に、半導体のトレンドである、微細化や集積化に向けた動きと関連する材料の成長性が高く、有望な領域となっている。

生成AI等による半導体需要増への期待や、後工程での投資が活発化する事に加え、車載・通信・パワー等用途毎にも成長が見込まれており、今後は材料・原料メーカーにも開発力・スケールアップ投資力がより求められていく。こうした中、海外企業も参入・シェア拡大を狙う動きが有る事等を鑑みると、特に中堅・中小材料・原料メーカーの再編・統合は、中長期的には不可避になる事が予見され、足元好業績である事から再編の動きは限定的である様に見受けられるが、中長期的には企業数で約6割に集約されていくと考える。

日系材料・原料メーカーの競争力の維持・伸長を狙うのであれば、参入済企業の自助努力のみならず、金融機関側からの支援も含めた、先んじた再編・統合の視座が必要ではないか。

半導体材料・原料における直近のトレンド

半導体は、ウエハに微細回路を刻む前工程、前工程で製造した回路を1つのパッケージにまとめる後工程、後工程で製造したパッケージを実装基板に搭載する二次実装工程に大別できる。

これまで、半導体業界では、前工程において、より微細な回路をチップに構築することで集積化を進め、高機能化を図ってきた。こうした微細加工は、リソグラフィ工程における露光の短波長化で実現してきたが、最先端の露光装置は1台数百億円にも上り、加工コストが激増している。

そのため、今後は、前工程における微細化に加え、後工程において、縦方向・横方向へのチップの積層化、統合化により、半導体の性能向上を図っていくことが期待されている。後工程での集積化の手法は、デファクトスタンダードが存在せず競争領域となっており、各社こぞって開発を推し進めている状況である。

こうした状況下において、従来の半導体材料業界は、半導体メーカーからの要求水準や認証を背景にM&Aが不活性であったものの、足許、既存プレイヤー同士の再編の動きがみられはじめた。

具体的には、中長期の成長や業界再編を睨んだ政府ファンドによる大手レジストメーカー買収や、垂直統合によるプロセス全体での課題解決を企図した、前工程材料に一定のシェアを有する、電子材料メーカーによるM&Aなどの事例が存在する。

こうした動きは一過性のものではなく、半導体技術の進化に伴い、製造及び材料開発コストが更に膨大になることが想定される中、効率的な生産・開発を実現する為には、業界・機能再編が進む可能性が高いと考えられる。

半導体材料・原料の全体像

半導体材料市場は、原料市場を含め、延べ14兆円以上の規模を誇る大規模な市場である。他方で、前工程、後工程、実装工程で20プロセス以上と、製造工程は長く、材料・原料を含め、250以上の材料・原料、200社以上の主要企業が存在する、フラグメントな市場でもある。

前工程材料は、ウエハ製造から平坦化・保護まで、10プロセス、約30の主要材料が存在し、市場規模は約6兆円で、70社程度の主要企業が参入している。微細化や積層化に伴う工程数の増や、半導体全体の需要増に牽引され、フォトレジストや高純度薬液などが、高い成長率・収益率を有する。

後工程材料は、ウエハのチップ化からパッケージ化まで、大きく7プロセス、16の主要材料が存在し、市場規模は約2兆円で、35社程度の主要企業が参入している。大きな傾向として、層間絶縁材や仮固定接着剤など、後工程の高集積化に対応して進化が必要な材料群が、高い成長率・収益率を有している。

実装工程は、プリント配線板の材料である銅張積層板の製造から基板の保護まで、大きく5プロセス、25の主要材料が存在し、市場規模は約3兆円で、70社程度の主要企業が参入している。
低誘電対応の銅張積層板など、低誘電や高耐熱性、高放熱性といった半導体全体のトレンドに大きく影響される材料が高い成長性・収益性を有している。

また、原料は、前工程・後工程・実装工程の各工程合計で、延べ200以上の原料が存在する見立てであり、市場規模は約3兆円で、50社以上の主要企業が参入している。これら主要企業には、汎用品は大企業中心の供給体制も、ニッチ領域特化の中堅・中小プレイヤーも一定存在している。また、EUV露光に対応したフォトレジストポリマーなど、微細化、高集積化、低誘電/高放熱といった技術トレンドへの対応を要する原料が高い成長性を有すると考えられる。

半導体材料・原料では、独自性の高い技術で世界トップレベルのシェアを誇る日系メーカーが多数存在している。例えば、日系中堅樹脂メーカーは、汎用向けのフォトレジストポリマーで世界シェア1位を、また、日系中堅化学品メーカーは、半導体研磨材の原料で9割のシェアを有しており、こうした企業は、足許の需要増に備え、増産体制を構築している。

他方、中国・韓国など外資企業の台頭も見過ごせない。例えば、ワイヤー向け封止材の主要プレイヤーに韓国系化学品メーカーが登場している。2015年にM&Aによるローエンド領域への参入後、2019年の日系企業買収戦 に参加しており、最終的にはハイエンドも狙っていると想定される。また、中国系化学品メーカーは10年以上前には多数ある企業の一つでしかなかったポジションから、足許では、トップ3の一角にまでシェアを拡大している。

今後の成長に向けた視座

前述のとおり、半導体のトレンドは、更なる微細化と、高集積化に向けた後工程における縦・横方向への積層化・統合化である。各工程の難易度が上昇する中、材料開発コストやスケールアップ投資コストが更に重くのしかかってくる可能性が高い。加えて、日系メーカーのポジションは必ずしも安泰ではなく、既存プレーヤーにとっては、内外の課題を認識した上で、今後の成長に向けて取り組むことが求められる。

では、自社が成長するためには、どのような考え方・視座に立てばよいのか。端的には、オーガニック成長のみならず、ボルトオン買収やロールアップ買収など、インオーガニックな成長も視野に入れ、業界全体としての最適解を求める検討を先立って行うべきと考えている。足許、半導体関連企業の業績は好調であるため、直ちに再編・統合を望む企業は少ないかもしれないが、今後の成長を企図し、開発・生産投資の効率化を求めると、同一材料・原料内で主要企業は6割程度まで集約が進むことも想定されうる。

こうした中で、各社の所有する技術やノウハウを共有し、材料開発力・生産力を高め、日系企業のポジションを維持・向上するため、早期に、一歩踏み込んだ企業体として統合するという選択肢も視野に入れる、という点が肝要である。また、その際、半導体材料・原料業界は、独立志向が強く、従来M&Aの経験に乏しいことから、個社の自助努力のみならず経験豊富な金融機関からの支援にも期待したい。

足許、生成AIをはじめ、自動運転、高速通信、パワーなど、様々な用途での半導体需要の伸長が想定される。また、後工程における投資は各半導体メーカー、OSAT共に活発である。多くの後工程工場は、24年~26年頃の工場稼働を見据えており、更なる成長に向け、こうした新規工場への材料納入を目指すのであれば、残された時間はそう多くはない。

日系半導体材料・原料企業の更なる成長を期待する観点から、早期に、個社の視点のみならず、各工程・関連材料を俯瞰した検討、則ち、再編・統合も含めた視座で検討を開始することをお勧めする。

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