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地殻変動が進むアジア小売市場 第1部

地殻変動が進むアジア小売市場 第1部

2023年11月6日

踊り場を迎える中国EC市場/重要性が高まるGBA

アジアはグローバルビジネスにおいて今後よりその重要度を高める─この見解を示す代表的な数値として、グローバルGDPに占めるアジア比率がよく用いられる。だが、GDPではなくグローバル小売市場に占めるアジアの割合で見ると、アジアのプレゼンスが強まっていくのがよりクリアにわかる。新興国含めたアジア全体の経済ステージが2030年に向けて上がっていき、小売市場の成熟度も高まっていくからだ。更には小売の中でもECに絞ってみると、アジアの存在感がより際立ってくる(図表1)。

しかし、他方でアジア小売市場の中での日系企業の位置付けは決して高くない。例えば、日本の対外直接投資残高を見ると、小売業の金額は製造業の3割に満たない。これは業種の性質によるものではない。現にアメリカ大陸への日本からの投資については、製造業と小売業でそこまで大きな差はない。前述の通り、グローバル小売市場においてアジアが持つプレゼンスを考慮すれば、本来、日系企業はアメリカ大陸ではなくアジアのリテールにもっと投資すべきだと思える(図表2)。

もちろん、アジアでは小売における外資規制が厳しい国も少なくない。だが、それでも日系企業は活路を見つけてアジアリテールでの存在感を高めていくべきだと考える。本稿でも取り上げているが、アジアのリテールビジネスは従来的なものに留まらず、多様な業態と手法が登場している。かつてと比較して、やり様の幅は拡がっているはずだ。

アジアのリテールビジネスは、市場規模も成長性も大きく、その市場だけを見ても魅力的だ。しかし、それだけではなく、日系製造業のアジアビジネスに対する波及効果の面でも小売を抑えることは重要だと考える。顧客タッチポイントから得られるローカル消費者の情報は貴重であり、メーカーサイドの商品開発や配架計画にとって有用なフィードバックになる。また、アジア新興国では消費者の多様化が進み、マスマーケティングによって画一的な購買行動を促すことは難しくなっている。ひとつの国の中でも世代間やセグメント間での価値観や購買行動の違いを読み、細かいコミュニケーションプランを設計していくことも重要となっているのだ。プロダクトアウトで「良いモノ」を作るだけでは、もはや勝てないことはよくご存知だろう。日系メーカーのアジアビジネスにとっても、リテールトレンドを知ることの重要性は益々高まっている。

ローランド・ベルガーはアジアのあらゆる国、あらゆる小売業態に対して多くのコンサルティング支援を行ってきた。日系企業のみならず、ローカルや欧米系リテーラーに対しても多面的な支援を実施している。その中で得られた知見について、本スタディでは国別・地域別にご紹介したい。スタディは3部構成としており、第1部では中国、第2部では東南アジア、第3部ではインドとバングラデシュを取り上げている。第3部の最後では、日系企業に対する重要論点を示唆としてまとめている。なお、このスタディの読者対象は小売事業者に限らない。前述の通り、リテールを知ることは、メーカーにとっても意義が大きく、本スタディがその一助になると考える。3部全てのボリュームは相応になるため、ご興味ある内容だけでも是非ご閲覧いただきたい。

それでは、まずは第1部として、中国小売市場について論じていく。中国小売市場のトレンドは、「オンラインを起点とした巨大市場の統合」「EC市場の質的変化」、そして「GBAの重要性の高まり」だと考える。いずれのトレンドも、中国EC市場の成長ステージが踊り場に入ったことがキーである。これまでのようにEC市場がどんどん伸びていくという量的拡大のフェーズが終わったのだ。巨大市場中国がまさに変わろうという岐路である。その潮目を上手く読むことが極めて重要だ。

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地殻変動が進むアジア小売市場 第1部

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アジアはグローバルビジネスにおいて今後よりその重要度を高める─この見解を示す代表的な数値として、グローバルGDPに占めるアジア比率がよく用いられる。だが、GDPではなくグローバル小売市場に占めるアジアの割合で見ると、アジアのプレゼンスが強まっていくのがよりクリアにわかる。

Published 11月 2023. Available in
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