日本企業の意思決定は何故遅く、歪むのか
By 田村 誠一
日本の上場企業CxO・経営企画責任者向け第3回意識調査結果を発表
欧州最大級の経営コンサルティングファームである株式会社ローランド・ベルガー(港区、代表取締役:大橋 譲、以下、ローランド・ベルガー)は、日本の上場企業CxO・経営企画責任者200人を対象に、組織における意思決定について「第3回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」を実施いたしました。
なお、前回「第2回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」については、 こちら をご覧ください。
調査結果の主なポイントは3点です。
①日本企業の経営者による意思決定、その6割は「本来すべきでない決定」。承認スタンプラリーが経営リソースを侵食し、自身が決めるべき意思決定に費やせる時間は4割に満たないのが実態
②「誰が決めるか」が決断の質を大いに左右する。正しい意思決定者が決断している案件ほど、その決断は修正されない—決断の約47%は、修正されずに実行に移される。無用な検討ループの排除と、間違った意思決定者の介在の最小化が重要
③また、6割の企業では事業部とコーポレートの壁が意思決定のボトルネックになっており、推進力を削いでいる
① 日本企業の経営者による意思決定、その6割は「本来すべきでない決定」。承認スタンプラリーが経営リソースを侵食し、自身が決めるべき意思決定に費やせる時間は4割に満たないのが実態
■ 自身が関与する意思決定のうち、「本来自身が決めるべき」ものは4割に満たず、残り6割は他部門・上司・部下が決めるべき案件への“巻き込まれ”です
■ 背景には、官僚的な文化や複雑な承認フロー、階層的な組織構造が経営者の時間と集中力という貴重なリソースを侵食しています
■ 更に踏み込むと、“自身以外が決めるべき”と捉えている6割については、下した判断に意志・当事者意識が伴っていない可能性もあると言えます
② 「誰が決めるか」が決断の質を大いに左右する。正しい意思決定者が決断している案件ほど、その決断は修正されない—決断の約47%は、修正されずに実行に移される。無用な検討ループの排除と、間違った意思決定者の介在の最小化が重要
■ 全ての決断のうち、約75%は実行までに修正されており、決断が覆されています。修正されないで実行されるケースは25%に留まります
■ 自身が意思決定すべき議案にしっかり関与できている場合、その決断は実行に移るまでに修正されにくい。つまり、正しい関与者による決断は質が高く、組織が余計なループに陥りづらいと言えます。実際、決断の47%は修正されずに実行に移されています
■ 他方で、あるべき意思決定者が曖昧なまま実行に移されているケースも数多く存在しており、結果として決断が覆される確率も高まっています
■ 従って、意思決定者を明確に絞り込むこと、そのために組織構造や意思決定フローを再整備することが急務です
③ また、6割の企業では事業部とコーポレートの壁が意思決定のボトルネックになっており、推進力を削いでいる
■ サイロ化による事業部門間の連携がボトルネックになるのは一般的な課題であり、日本企業では特に地域間コミュニケーションが課題になることが多いことは、想像通りの結果と言えます
■ただ、事業部門とコーポレート部門のコミュニケーションが意思決定のボトルネックと回答した企業は全体の6割に上り、事業部間や地域間を上回ります
■ 現場の判断がコーポレートの壁に阻まれ、意思決定が宙に浮き、判断コストの増大が常態化している背景には事業への理解度・熱量の差があります
■ 企業運営における経営資源の最適配置や資本市場とのコミュニケーションにおいて事業部門とコーポレート部門との連携の重要性は言うまでもありません
■ 従い、事業部門とコーポレート部門の間に存在する壁を排除が必須です。加えて、意思決定プロセスを整流化し、企業価値向上の観点から議論できる層だけで集中議論する体制構築(“真の”CXOチームの組成)も同時に求められます
「意思決定とは、『意思』を『決定』すること。『意思』のないところに『意思決定』は存在しません。大切なのは、自分自身が『意思』を持ち、他人の『意思』とぶつけることです。『意思』あるところに意思決定権限を持たせること。それが、この問題の本質であり、意思決定のスピードと質を上げることに他ならないのです。」
本調査の結果を受け、ローランド・ベルガーの企業変革チームの責任者でシニア・パートナーの田村誠一は、次のように述べています。
「意思決定とは、『意思』を『決定』すること。『意思』のないところに『意思決定』は存在しません。若手社員であればともかく、中堅幹部・中核人材の中にすら、『それは会社が決めること』と言うヒトを見受けます。会社に人格はありません。待っていても会社は『意思決定』しません。大切なのは、自分自身が『意思』を持ち、他人の『意思』とぶつけることです。『意思』あるところに意思決定権限を持たせること。それが、この問題の本質であり、意思決定のスピードと質を上げることに他ならないのです。」
ローランド・ベルガーのアルムナイであり、変革アドバイザーである野本周作は次のように述べています。
「アンケート結果から見えてくるのは、意思決定を仕組み化した結果、反対に誰が責任を持つのかが分からなくなってしまい『みんなで渡れば怖くない』的な状態になっているということではないでしょうか。仕組みを入れるのはゴールではなく、ある意味スタートです。入れた後に本当にワークしているかをウォッチすること。そして何より『誰が責任者なのか』を明確にすること。それがPDCAを回す鍵になります。」
【調査概要】
・調査時期:2026年1月
・調査機関:ローランド・ベルガー
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:全国、男女、20~70代、上場企業に属するCxO・経営企画責任者(CEO等の経営者/役員、または経営企画本部長/部長クラス)
・有効回答数:200名
企業変革は、企業や組織が将来に対応できるよう導くことを目的とするものですが、変革を統括することに加え、組織、人材、およびステークホルダーとのコミュニケーションといった、企業変革に密接に関連する現場における豊富な専門性が求められます。ローランド・ベルガーは、引き続き、あらゆる経営手法を活用しながら、継続的な企業価値の向上に繋がるよう日本の企業をご支援してまいります。
【コンサルティングに関するお問い合わせ先】
ローランド・ベルガーの企業変革チームは、事業構造や財務構造の再構築、抜本的な収益改善、企業再生・変革を手掛ける業界横断型専門チームとして、クライアント企業の変革に向けた各種ご支援を行っています。
弊社 お問い合わせフォーム 、または、お電話(03-4564-6660)にて、下記コンサルタント宛にご連絡ください。
田村 誠一(シニアパートナー)
・経営層に伴走する企業変革支援に精通する。
・官民ファンドで投融資責任を負い、投融資先企業の再生と変革を主導。
・経営実務を経験(元JVCケンウッド代表取締役副社長、元ニデック専務執行役員)。JVCケンウッドではCSO/CFOとして中長期戦略策定と実行、事業COOとして事業再構築と実行を主導。ニデックでは買収事業(欧米中)の成長を現地経営陣とともに主導。
野本 周作(変革アドバイザー <非常勤> )
・六次産業の先駆けである上場外食企業(エー・ピーホールディングス)でコロナ禍を含む5年超CEO/COOを歴任。
・事業再生・企業変革を主導PEファンド投資先企業での投資直後の経営企画・マーケティング責任者の経験や、コンサルタントとしての実行支援経験を豊富に有す。
【Podcast配信について】
・ローランド・ベルガーは、Podcastの音声によるビジネス番組「変革参謀 -当事者が語るリアル-」の配信を2025年6月に開始いたしました。経営コンサルタントながらも変革をリードしてきた『当事者』としての視点を持つ田村、野本の2人が「企業変革とは何か」「企業変革のリアルとは」について語り合うトーク番組です。
・大企業からスタートアップまで、すべての企業経営者、ビジネスリーダーを支えビジネスの手助けとなる発見や示唆を提供することを目的としています。詳細は
こちら
からご確認ください。
【ローランド・ベルガーについて】
ローランド・ベルガーは、1967 年に設立されたドイツのミュンヘンに本社を置く世界有数の経営コンサルティングファームです。世界50以上の主要都市にてビジネスを展開し、Entrepreneurship(起業家精神)、 Excellence(卓越性)、Empathy(共感)という価値観を原動力とし、現在および未来の重大な課題に対応するための最高水準の知見及びサービスを提供しています。